NoBlog -I'm Hearing Impaired-

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感音性難聴(右:105dB 左:91.25dB)/ 音声認識と情報保障に関する研究をしてました

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京都大学 バリアフリーシンポジウム

2013年6月29日〜30日、京都大学の理学部6号館でバリアフリーシンポジウム(しなやかで、したたかな「障害学習」のすすめ)が開催されました。セッション1の第二部で、障害を持つ学生が現状について話し合う座談会が開かれ、自身の障害や学生生活について発表させていただきました。200人を超える参加者の前で緊張しましたが、自身の障害に真摯に向き合う良い機会でした。発表の場を与えて頂きました関係各位の皆様に感謝しております。以下に、座談会の原稿(私の分のみ)を公開します。

 

座談会の原稿


司会/ 「所属、氏名、学問分野、どんなことを勉強しているかを教えて下さい」

桑原/ 情報学研究科修士課程2年の桑原暢弘と申します。学問分野として、情報学(コンピュータサイエンス)です。私の専攻では、「人工知能」という言葉を聞いたことある方もいると思いますが、人間の行う情報処理について勉強しています。私は、明日の午後のセッションで講演される河原先生の下で、音声認識の研究に取り組んでいます。最近、スマートフォンに搭載されている、iPhoneの「Siri」やdocomoの「しゃべってコンシェル」のような音声認識テクノロジーを利用して、パソコンテイクに活用する研究に取り組んでいます。今会場にありますパソコンテイクを、人手でなくコンピュータで音声情報を文字情報に変換して、自動的に字幕を提示する研究をしています。説明が長くなりますので、興味のある方は明日の午後に河原先生が講演されますので、聞いて頂けたらと思います。よろしくお願いします。

 

司会/ 「障害について、これまでのこと、大学でのサポートについて教えて下さい」

桑原/ 生まれつき難聴で成長と共に聴力が低下しています。聴力レベルは、左が90dB程度で右が100dB程度です。健常者の平均が0dBでして、このdBの値が大きくなればなるほど聞こえが困難になります。私の聴力レベルですと、電車が通るガード下で音がやっと聞こえます。寝ているときは補聴器を外すので、火事とか起きたら、音に気づかず逃げ遅れる心配等あります。

  京大に入る前ですが、学部時代、別の大学に通っていまして、大学院から本格的な支援を受けるようになりました。大学までノートテイク(文字による情報保障)などの支援にアクセスできなかったこともあり、音声情報の重要性から目を背けていたところもありました。今考えれば、自分自身で積極的に大学に訴えれば、必要な支援を整えることが出来たのかもしれません。残念ながら当時の私には、障害のことや支援のこともよく理解していなかったのではないかと思います。

 現在の支援ですが、研究室のディスカッションでの支援が中心になります。ディスカッションでは、研究室の同期がパソコンテイクをしてくれています。留学生の英語のプレゼンでも、同期が英語から日本語、日本語を要約してタイプしてくれます。二段要約ですよ!自慢ですが、同期すごいですよ。初めてテイクを受けた時、自分がここまで情報を落としていたいのかと驚きました。後悔しても仕方ないのですが、もっと早く情報保障を受けていれば良かったなと思います。それから支援のことで上手くいくこともあり悔しい想いもしますが、指導教員や仲間、支援のスタッフの方と一緒に考えることで、様々なことに対して前向きに取り組むことができるようになりました。

 

司会/ 「日常生活、一人暮らし、通学、サークル活動について教えて下さい」

桑原/ 一人暮らしを始めて、もう4年目になります。ここ一年を振り返ってみますと、ビックイベントとして就職活動がありました。本当に色々と苦労しました。合同説明会での会社案内、聞き取れませんし…会社からの選考案内の電話に対応できませんし…健常者と同じように就職活動したら上手くいかないと思うので、工夫しましたね…

 私は、会社側が「障害者に対して、どのようなスタンスと取っているのか」という点に絞って、就職活動してきました。とくかく沢山の企業に配慮のお願いをする(個別面談やメール対応可能)メールを送りました。また面接で自身の障害を説明するのですが、これが難しい、本当に難しい。10年以上共に生活した家族でさえ私の障害を理解してもらえないのに、30秒程度で面接官にどうやって説明するか。どうやって説明すればいいでしょうかね…?(笑) この点に関して、支援室の村田さんや京大手話サークルの皆さんのサポートが大きかったです。村田さんが嫌になるくらい相談したかもしれません。如何ですか、村田さん?今日も会場にいると思いますが、手話サークル員のサポートも大きかったですね。サークル員と沢山話して、自分の障害や考えを整理できました。本当に周りの環境に恵まれていたと思います。私からは以上です。

 

会場/ 「電話対応はどうしていますか? 待ち合わせで困りませんか?」

桑原/ 友人との待ち合わせ等は、メールやSNSを積極的に利用しています。本当に便利ですよね。こんな便利な社会なのに、電話対応しか受け付けない所って色々あるんですよね… 例えば、病院の予約や何かの解約手続きなど。本当に大切なところに限って、電話できない。自分の力でどうしようもない時は、友人などにお願いしています。

 

会場/「夢は何ですか?」

桑原/  無事に卒業し社会人になったら、障害者でも働けると証明したいと思っています。勤め先だけでなく、社会全体に証明出来たらいいなと!

 

【座談会の写真】

(助教授に撮影して頂きました)

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